ロールアウトINDEXに戻るヤルヤル体験記>’97北海道冬物語      工事中です

斜里駅から旅は
始まった
屈斜路湖を
バックに
森のクマさんは
いなかった
晩御飯の
支度を
星空の下での
ご飯はサイコー
この旅で探したものは
これだったのかも
朝ご飯もうまい さあ出発すっか 藻琴峠は
正直つらかった
旅の重さは
荷物の重さ?

コース・装備品・行動詳細は
工事中です

冬の北海道
シュラフのわずかな隙間から入ってきた赤色ランプの光にふと目を覚ます。
「なんだろう・・」 シュラフからそっと顔を覗かせると同時に懐中電灯を持った2人の男が私のところに やって来たのだった。
97年1月21日午前1時50分のことである。ランプの光はなんとパトカーの赤色灯だった のだ。
「不審の者が道端で寝ている・・・」どうやら地元の人の通報でパトカーがきたよ うだ。
まあよくよく考えてみればマイナス20度近い夜中に道端で人が寝ていれば通報もされ るだろう。
「北海道激冬期MTB野宿ツーリング」と題した今回の旅。
それは、旅館や民宿など はもちろんのことテントも一切使わず野宿しながらツーリングするというものである。
心をなごましてくれる旅。そんな旅が行く先々で人込み状態だったら・・・
「そう私だけしか味わうことのできない、そんな旅をしたい・・・。」
そんな考えか らこの激冬期MTB野宿ツーリング計画は始まったのである。

97年1月20日 北海道女満別空港着。
頬を刺すように痛いオホーツク海からの雪まじりの北風は初めて 訪れた北海道の冬の激しさを思い知るには十分過ぎた。
バスとJRを乗り継いで斜里駅 へ。 斜里駅前でモチ入りラーメンを作り夕食とする。
少しワインも飲み終え、この駅で一 晩お世話になろうと思っていたのだが、宿直の駅員さんの機嫌が悪かったのか「ここに チャリンコいつまでも置かないでほしい。駅は寝るところではない!」ときつ〜いお言 葉を言われてしまったのである。
まあ、もともと野宿の旅なのですぐ荷をまとめウトロを目指すことにする。
しかし、もうすでに午後7時30分をまわり寝場所を探しながら走る。
気温マイナス16度更に気温は下がる。1時間程走ったが適度な寝場所が見つかりそう もないので仕方なしに道端で寝ることにする。
幸い風もなく天気も良さそうだ。 沿道に積もった雪を踏み固めスコップで寝場所を整える。
その横を何台もの車、何人も の人が立ち止まるように通り過ぎる。
そうこうしていると70歳くらいのおじいさんがやって来て「こんなところで寝たら死 んでしまう北海道の寒さはハンパじゃないぞ!」と言い去った。 そんな言葉も少し気にはなったが、満月を魚に網走で買ったワインを飲む。

午後10時 を過ぎていたか・・・。
少しうとうとした頃、懐中電灯を手にした警察官は心配そうに私のこと を覗き込んだが
「しっかりした装備をしてますから大丈夫です。」の私の言葉に「わか りました。でも十分気をつけて下さいね」と警察官。

1月24日7:00起床
露天風呂に入るべく知床から摩周駅まで輪行で移動する。
本当の ところ輪行は避けたかったが日程と走行距離を見比べるとこうせざるをえなっかた。
午後1時30分摩周駅を出発、カチカチに凍った243号線を屈斜路湖の和琴温泉を目指して ひたすら走る。
今回初めて使うスパイクタイヤであったが凍結した路面を走る時のグリップの良さと言 ったら文句の付けようのないものであった。
今日も例外ではなく午後3時を回ると一気に寒さが増してくる。しかしあったかい温 泉に入れると思うと寒さも疲れも忘れて、ペダルにも自然に力が入る。
冬の北海道というと、もの凄い積雪を思うかも知れないが幹線道路はすべて除雪して いる。
しかし寒さがハンパじゃないため凍結はさけられないのが実状である。
又、知床もここ も行き交う車はほとんどなく安心して走行できた。

和琴キャンプ場に隣接しているここの露天風呂は、屈斜路湖からそ のまま掘り込んでいて冬の使者・白鳥も翼を休めるというほどの野趣たっぷりの風呂で ある。
脱衣所、それに暖房の効いたトイレまであるこの場所はツーリストばかりではなく、地 元の人達からも親しまれている混浴露天風呂である。
事実、この日も毎日来ているという40代の夫婦が3組、そして車で1時間ほどかけて来 るという男性は3日に1度くらいと言っていた。
雪の積もった湖畔で野宿をする。露天風呂近くに寝場所(といってもシュラフを広げ ただけ)を確保したので夜2回、朝1回の入浴を楽しんでしまった。
実は北海道へ行く前から心配していた「氷点下での露天風呂」は体の芯まで暖めてくれ るため全く冷えることなく服を着る事ができるスグレモノだった。
現に入浴中、カラスに食料を狙われた時私は全裸で雪の上を走りまわりそのカラスを 追い払ったくらいであったから

満月に輝く雪山
翌朝シュラフに降り積もった雪を払う。シュラフから上半身を出したその時、私は目 の前の光景に圧倒された。
それは湖面のはるか彼方に昨夜からの雪で、更に白さを増し た雪山そしてそれを照らすかのように満月が輝いていた。
「来て良かった!・・・。これこそ今ここにいる私だけの世界なのだ・・・」
もう1日ここでゆっくりとしたかったが荷物をまとめ午前10時過ぎに和琴温泉を出発 するする。
屈斜路湖を東に391号線、そして東藻琴村方面に進路を変えひたすら走り続ける。
素藻琴山を左手に見ながらの峠越えがきつい。藻琴展望台に着いたのが午後2時35分。
ここが峠と思いがんばって来たはずが実際は更に1時間も登りが続いた。
凍結した道の上に降り続く雪、この藻琴峠を通る車はほとんどなく、ふかふかの雪は さすがのスパイクタイヤもお手上げである。
ハンドルステムに付いている温度計は -15℃を指している。
そして吹雪きは更に強さを増し視界をさえぎる。 目だけを覗かせているマスクもバリバリに凍りついてしまってる。
もうこなるとホワイトアウトになった雪山にひとり取り残されている様な気分にもな ってくる。
「しかし、これこそが私の想像していた激冬期もMTBツーリングではないだろうか」 やっと藻琴峠に着いたのが午後3時35分。
約3時間登りっぱなしであった。
ホット一息 つくのもつかの間、ここからの下りが実はたいへんだったのである。
というのも登りの時というのは、ペダリングをしているので体温の低下はそれ程ではな いが下り坂では、運動量はゼロに近い。
それにマイナス15℃前後の気温。そして追い討 ちをかけるように吹き荒れる風は私の体温を容赦なく奪い取る。
手のしびれの感覚はすでになく、何よりも頭が凍って割れそうに痛く(カキ氷を急いで 食べた時に起こる痛みを何百倍にもしたような)幾度となくMTBを止め頭を抱え込む。
この日も又寝床を探しながら走り続けたが適度な場所がなく、JR鱒浦駅にお世話にな る。
例の斜里駅とは違いここは無人駅なので気兼ねなく寝床を整えることができた。
しかしずーと星空の下で寝ていたためかそれとは逆の囲いのあるそれも3面が大きな窓 があるこの駅内は外から誰かに覗かれているようで少し落ち着いて眠れなかった。

サロマ湖面横断

1月27日、いよいよ待ちに待ったサロマ湖面横断の日がやって来た。
昨日野宿したキムネアップ岬のキャンプ場近くで家を建てている大工さんにとりあえず 湖面の状態を聞いてみることにした。
「西側の湖はまだ凍っておらず、この辺の氷も薄 くまだまだ氷の上に乗れる状態ではない・・・」
そんな返事に私は愕然とした。
この激冬MTBツーリングの一番の楽しみであった「サロマ湖面走行」それが氷が薄 く走行できないなんて。
少し思案した結果、とにかく走ろう、そして危険を感じたら引き返そう。
「だって氷が突然割れて私もMTBも一度に落ちることなんてありえないこと」だと決 めた。
恐る恐るMTBにまたがりペダリングを始めた。所々押し出されて突き出た氷が、岩 の様に固まっている。
こういう場所は、MTBを押したり持ち上げたりして越えなけれ ばならないが、平らで走りやすい箇所もある。
この氷に対する心配は、最初のうちだけ であとはもう湖面の上を走っていることに酔いしれてしまう程とても楽しいものであっ た。
少し沖の方に行くと所々色の変わった場所が目につく。青っぽく透明がかっているの はどうやら薄い氷のようである。
そんな箇所がどんどん増えてくる。そうこうしている 間にその箇所を通過しなければ先に進めない状況になってしまった。
息を殺してそーっと、そして一気に走り抜ける。「大丈夫だ!。ビクともしない!。」
1時間も過ぎた頃だろうか。はるか彼方、岸の方に黒く動いているようなものが見え た。
どうもこっちの方に向かっているようだ。
よーく見るとその人は駆け足で急いでいる。
「どうしたんだろう・・・。何かあったんだろうか・・・。」 そして私のところから200mか300mに近ずいたところ手を振っている。
「こっちには私しかいないし、私に何か用事でもあるのだろうか?」どうやらその男は もう疲れて走ることができず、私に「こっちに来てくれ」と手を振っているようだった。
半信半疑でMTBにまたがりその男の方に走って行った。

「何してんの!?」いきなりの問いかけに私はやっとその男が警察官だという事に気 がついた。
しかし私はなぜ警察官が私のところに来たのかまだ理解できず「自転車で湖面を横断中 です」と胸を張って言うと警察官は「通報があったんだよ。あんたのこと。ダメだよ、 冒険じゃないんだから。 この辺なんかもこのくらいしか、氷の厚さがないんだから。」と言って手で氷の厚さを 教えてくれた。
それは10cmほどであった。 残念ながらサロマ湖面の走行はこの時点で終わりとなりすぐ238号線に戻らざるを得 なかった。
しかし翌日見たサロマ湖面から昇る朝日、知床オホーツク海の荒波、屈斜路湖の満月、 藻琴峠の吹雪、そして強風の中でシュラフにくるまってじっと朝を待ったことなど「激冬期MTB野宿ツーリング」でしか味わえない数多くの想い出を私は心の奥に刻ん だような気がする。
ツーリング・旅の方法は人それぞれ違うだろうが、充実感のあるものにするためにも 一歩踏みこんでまだ見ぬ世界を自分なりに味わう事が大切なような気がする。


あとがき
今回のツーリングでは全て野宿ということにしたが、基本的にはテントを使うべきだ と思う。
なぜなら初日のように民家の近くでは不審者に思われいろいろな意味で迷惑を かけてしまうからだ。
それと激冬期ではシュラフが汗と息などで凍ってしまうのだがテントがあればその中 でコンロを使い暖め乾かすこともできる。何日間も凍ったシュラフに入るのは辛いもの だ。
そして夕食後は寒さ、風、雪のためすぐにシュラフに入らざるをえない。
正直言って全 く、くつろげる状態ではない。よってテントは必要とも思える。
今回は雪洞を作りそこを寝場所にする予定だったのだが北海道の雪はサラサラで雪洞を 作ることはできなかった。