山も川も行こうひろちゃんの厳冬期北海道ツーリング第1弾

ひろちゃんの厳冬期北海道MTBツーリング
期間12月27日〜1月3日 
遠足クラブのガイド役でもおなじみのひろちゃんの厳冬期北海道MTBツーリング
凍てつく大地、降り積もる雪・・・そこをスパイクタイヤで走る女ひとりのMTB旅、
その果てに彼女は何を見たか 
第2弾 2月編は
旅で出合ったもの
それは小さな自分
だったかもしれない
オホーツク海横を
ひたすら走る
至るところで見かけた
防風林
立ち止まると
一機に寒さが襲って来る
一旦吹雪くと
あっという間に真っ白
霧の・・・いや
雪の摩周湖
屈斜路湖湖畔での
キャンプはサイコー
暖かい食事も
寒空の下で
ガソリンコンロ不調のため
凍りかけのおでんを
旅の想さは
荷物の重さ

12月27日 伊丹空港11:20→女満別空港14:30→バスにて網走駅16:15→電車にて斜里駅17:30
        斜里駅横でテント泊
PM4:00
  網走にてコンロ用燃料のガソリンを「危険だから」と売ってもらえず、いきなりブルーになる
PM9:05  辺り一面凍結路。チャリ組み立てに二時間かかる。斜里の駅員さんに自宅にとお誘いをうけたが初日に
        甘えると知床に辿り着けないかなと思い斜里駅横にテント張ってビールを飲む。
        コップにに唇が張りつきそう。北海道限定ビールはうまい!

12月28日 斜里7:45→ウトロ14:00
        ウトロのライダーズハウス横でテント泊(44km走行)
PM0:40
  走行中暖かく感じるもマイナス8度、日中気温0度時も陽射しがあり暑く感じる。でも足先はしびれて感覚なし。
        喉が乾くが昨夜うっかり水筒の水を凍らせ途中の自販機や店は閉鎖のため脱水状態になる
PM4:00  今晩の宿はウトロのライダーズハウスの焼肉屋の横なのだ
PM4:30  ホテルの露天風呂に頼み込んで半額の五百円で入れてもらった。
        公共の温泉は今の時期閉鎖中とのこと。ラッキー!でも温泉の後にテントに戻るのがつらい
12月29日 ウトロ9:40→知床自然センター10:40着・14:10発→ウトロ→オシンコシンの滝16:00
        オシンコシンの滝駐車場でテント泊(21km走行)
PM      知床自然センターまでの登り坂でバテた!気温プラス5度暑い!でも風は冷たい!
PM      知床自然センター近くに泊まるべくテントを設営したが「遭難多発のためこのへんでキャンプは自粛してほしい」と
         の自然センター管理人の弁。プレペの滝などを散策する。
PM6:00  オシンコシンの滝の駐車場にテント設置。ガソリンコンロ不調により冷たいおでんと冷飯が晩御飯となる、トホホッ
12月30日 オシンコシンの滝8:30→斜里→札弦12:05→川湯温泉14:00 
        公衆浴場のおばさん宅に泊めてもらう(30km走行+車に便乗)
AM7:00  
朝起きると雪がMTBに積もっていた。気温はテントの中でプラス1度

PM    オホーツク海からの横風、雪がかなりきつく自転車に乗ることができず押して進む。
        野上峠は除雪作業が間に合わない程の豪雪。ゴーグルを着けるも視界ゼロ状態、 
        通りすがりの運転手が半分強引に車に載せてくれる。真っ白になっていた足の指先を中川べりの足湯に入れる
12月31日 川湯10:35→砂湯11:30→屈斜路湖和琴温泉14:00
        和琴温泉湖畔テント泊
(24km走行)
        昨夜車に載せて移動できたため予定より2日早く和琴半島に着く。ここで新年を迎えられる、スバラシイ!
        しかしビールがシャーベット状になってしまい飲めず残念 
01月01日 和琴温泉10:30→弟子屈12:30→摩周湖15:00
        摩周湖テント泊(27km走行)
AM7:00 
初日の出をカメラに収める、そして朝風呂     
        摩周湖への9kmの上りでバテル、しかし休憩すると寒い!湖面には凍りが張っていた

01月02日 摩周湖9:30→摩周駅10:50→屈斜路湖和琴温泉14:00
        和琴温泉湖畔テント泊(34km)

        摩周湖からの0kmの下り坂は全身をもぎ取られる程の痛み冷たさであった
        その後適当に休憩する所もなくそして店もなくハンガーノックになりそうになり田んぼに入り
        凍ったインスタント赤飯をかじる(ガリガリ・・・)
01月03日 屈斜路湖和琴温泉9:38→バスにて女満別空港→伊丹空港
        
昨夜から朝にかけてがこの旅一番の寒さのよう。マイナス15度の中冷たくなった手を温泉に漬けながら
        MTBをコンポする


期間 H15年12月27日〜H16年1月3日 7泊8日
目的 厳冬期の北海道をMTBで旅する
形態 MTB(初代MTBを組む)単独・テント泊
行程 伊丹空港→女満別空港→JR網走駅→JR斜里駅
   →ウトロ→知床半島→斜里往復→川湯温泉→屈斜路湖・和琴半島→摩周湖→和琴半島→女満別空港
走行距離 180キロ

 女満別空港の一角で、オホーツクラーメンの大きな器を前に箸を持つ手がわずかに震えるように感じる。
いよいよ、待ちに待った北の大地向かって走り出す日がやってきた。たった一人での激寒MTB旅の始まりだ。
 12月の中旬、一人旅に出て自分と向き合い、充実した時間を過ごしたいというかねてからの思いが首をもたげる。
何かを探し求めている自分が分かるが、でもこの時期に何を、どこで?私のスタイルってどんなもの・・・?
そうだ、自転車だ、自転車なら山スキーや雪山登攀よりも、一人で旅ができる。荷物も持っていけるし、道に迷うこともそうないだろう。
よし!冬山装備を持って自転車で雪の北海道に行こう。いいじゃないか。瞬時にして心は決まり北の大地に向けて思いは熱く燃えた。

☆12月27日 第1日目
 30リットルのアタックザックを背負い、フロントバックは斜めがけ、輪行バックをひきずるいでたちで女満別空港に降り立つ。さ・さむいっ。
すべるっ。しかも、重いぃっ。立っていることも出来ず、1つずつ荷物を持って階段を往復する。
JR網走駅を経由しJR斜里駅に到着したのが午後5時30分、すでに真っ暗だ。駅前の電燈が白い雪の中でさみしげにまたたいている。
早く自転車を組んで走り出したい欲求にかられるが、右も左も分からないので駅員さんの忠告通り、駅横でテントを張らせていただく。
実は、単独で山に行きたくて購入したテント、実際に1人で使うのは初めてだ。
小さくても、私だけの空間に身をゆだね、ベットを独り占めして伸びをする子どものような気持ちになる。
ここは明かりや水場にも不自由はしない、ゆっくりして明日は朝一番に出発しよう。
☆ 12月28日 第2日目 走行距離44キロ
気が気ではなく、早朝より目覚める。昨夜の駅員さんの無事帰っておいでとの温かい言葉に笑顔を返しながらスパッツをつける。
自転車での旅は初めてだ。うれしく出発前の写真をとるが、三脚で自分を撮るのも初の試み。もちろん、キャリアに荷物を付けることもスパイクタイヤも。期待いっぱい、夢いっぱい、自然に歌を口ずさみながらウトロを目指して朝の町中を走り出す。
少しハンドルをとられるが、グリップもいいし案外まっすぐ走るじゃないか。
でもちょっと調子に乗りすぎたのか、斜里の町を一周して出発地点に戻ってしまった。
あららら、忘れてた、私は大の方向音痴だったんだった・・・気を取り直して知床へのずっと先まで続く1本道へでると左手に波立つ海が現れる。吸い込まれるように車道を外れ雪をラッセルしていくと、眼下にはオホーツク海が。北の海にいる実感が心に広がった。
少し体が温まり気温を見ると−8℃。日中最高気温も0℃だが、自転車をこいでいると汗がにじむ。体がほてりのどが張りつきそう。
昨夜うっかり凍らせた水筒の水はとけないし、何キロも手前から看板のあったドライブインも冬期閉鎖中。
おまけに期待していたパーキングの自動販売機も閉鎖中ときたもんだ。まさか、冬の北海道で脱水状態になるなんて。
そこへなんとコーヒーを差し出してくれる人が登場。その人はバスから私を見て、わざわざレンタカーで話を聞きにときたという。
何はともあれ有り難い。のどがうるおい元気100倍、再び北海道の大地を踏みしめている自分に酔い、ひとりでに笑みがこぼれてきた。
普通なら2時間少々のところを、一日がかりでウトロに到着。長かったぁ。ほっとして、民家や歩く人達に妙に懐かしさを感じる。
さぁ、いよい初めてのテント場探しだ。開いていたスーパーでキャンプ場をたずねると、閉鎖中ですよと首を傾げられ不安になってしまう。
町中をうろうろし、町外れにライダーハウスの敷地を発見、ここを今晩の私の城としよう。

☆12月29日 第3日目 走行距離21キロ
昨夜は数時間おきに目が覚め、その度に耳をすまし息を殺していた。はっきりと目覚め、自分の鼓動が分かるくらい身体に力が入っている。
野宿は初めてなので仕方ないのだろう。
今日は未知なる地、冬の知床に行くのだ。知床を早く見たくて仕方がなく、休む間も惜しんで、オーバージャケットを脱ぎ捨てひたすら上る。
着いたら地図を見ながら昼ご飯を食べよう。だが、着いた先、知床自然センターでは、レストランは冬期閉鎖中、そして知床峠閉鎖はもちろん、知床五湖方面へも行くのは自粛してほしいとのこと。
遭難が多いのでと、スタッフのたくさんの目が突き刺さるようにこちらを向いているように感じる。
知床を散策するのが今回の目的の一つで、わかんやストックを持参していたのに・・・振り切ってまで行くのも阻まれるし、残念だが今の私には知床の懐にまで入り込むのは難しいようだ。
せめて少しだけでもとフレペの滝付近を散策しながら、取り出す余裕がなかった鉄の塊のような一眼レフで景色を覗いてみた。
レンズを通した景色は、誰もいない白い林にいる私を客観視して見せてくれた。1人でここに来てるだけでもラッキーだった、この先も自分の足で楽しく旅を続けられたらいいじゃないか。
あっさりと視野が変わり、2日ほど定着する予定を変更し退散を決める。輪行も考えたが、自転車に乗らない旅は考えられなくなってきた。
やっぱり自転車で、流れ行く今を心に刻み全身で時の流れを感じよう。
あぁ、どんなことが待っているんだろう。そう考え始めると、いてもたってもいられず、自転車を雪の中から引っ張り出した。
次なる旅の目的地、屈斜路湖に向かおう!
知床から10数キロ走ったオシンコシンの滝駐車場、周りには何もないがトイレと水を確保できるので、今晩の宿をここに決めテントを張る。
が、なんとここでガソリンコンロのノズルが詰まり使用不可となってしまったのだ・・・!
昨日からも行動食続きで、今晩の食事を楽しみにしていたのに。
仕方なく凍りつきそうなレトルトおでんと冷奴で空腹を満たすが、体がシンから冷えきってしまい、震えと腹痛に一晩もだえ、後から思い出しても胃が痛んだ。
テントは、入り口をぴったりと壁に張りつけ、自転車から張り綱を伸ばして固定してある。
もし、何かあればテントの反対側をナイフで切って脱出しよう・・・昨夜に増して心地悪く感じ、びくびくしながら何度もにぎったナイフを確かめ、ひたすら朝を待った。女一人の野宿旅、こんなにも心細い思いをするものなのか・・・

☆ 12月30日 第4日目 走行距離30キロ
朝起きると、自転車の上にはびっしり雪が積もっていた。オホーツク海からの風で固定しているテントがあおられる。
雪に遭うんだな。
斜里に向かってこぎ出すが、風が強く、わだちから外れたり道横の除雪の雪に突っ込み思うように進まない。
押したり、乗ったり繰り返しているうち、吹雪となり赤いジャケットに白く雪が積もる。遠く長い、長い道のり。
四駆の車が何台も通り過ぎ、うらやましくなり思わずため息が交じる。「死んでしまうぞ、乗ってけ!」威勢のいい声が軽トラから叫び、ほっとした私は立ちすくんでしまいそうだった。
実家にイズシという寿司?を持っていく気のいいおじさんの車は、隣町まで、いや、まぁ次の町までといった具合で進む。
「どこまで行っても一緒だ。ここから行け!」私よりもおじさんが下ろす決意をし、峠の手前で見送ってもらった。
思わぬところまで来たが、おじさんの云うとおりこの峠を抜けたら川湯温泉だ、頑張れば今日中に温泉に入れるぞ。
ところが、すぐに峠越えの大変さを思い知ることになった。野上峠は除雪が追いついておらず豪雪地帯と化していたのだ。
雪はいっそう吹きすさみ視界がなくなる。明るいうちに越えるのは無理かも・・・でも、食料もわずかな行動食しかなく、ガスも使えないから越えてしまいたい。亀のようにゆっくりと進む。
車はライトをくゆらせながらゴーッと通り過ぎていく。きっと、向こうからも私がとらえられていないだろう。
足先はしびれて感覚がないが、一生懸命に動いているからなのだろう、寒さはさほど感じない。
そこへ、乗用車がなかば強引に積もった雪もろともトランクに自転車を押し込んでくれた。半分おちそうだが、まぁこの際どうなってもいいかという気分になり後部座席に転がり込む。
天気が荒れれば峠越えは車でも大変なんだ、あきれ顔でちょうど両親くらいの夫婦が私の顔を覗き込んでいた。
着いたところはその夫婦の目的地、いい感じのひなびた川湯温泉公衆浴場。
入るときつい硫黄のにおいが全身を包み、全身が解凍されて力が抜けていった。
こんなに温泉を有難いと思ったのは初めてかもしれない。寒さは感じていなかったはずなのに、足先は透明になり生気を失っていた。
でも、うかうかしてはいられない。今晩のテント場を探さなければ。
まずは、腹ごしらえと食事できる所を尋ねると、近所のおばさんたちがなに!外で寝る?女の人が1人で?!と大騒ぎになる。
結局、番頭のおばさんが連れて帰ってくれるとのこと、おばさんの仕事が終わるのを待ってのこのこシュラフをもって家までついていった。一人暮らしのおばさんの家は天国のように暖かく、久しぶりにナイフも手放し、大の字になって熟睡した。

☆ 12月31日 第5日目 走行距離24キロ
テントでは上下6枚ずつ着込んでだるまのようなのだが、今朝は楽々ストレッチができる。
誰かと朝ご飯を食べる何で何年ぶりかしらと、おばさんがテーブルに乗り切らないくらいの食事を並べてくれ、二人ではしゃぎながら箸をすすめるきっとこれが私の北海道での一番温かく贅沢な食事になるに違いない。朝食がすんでからも、話はとどまる事を知らず、9時から仕事なのにおばさんは少しくらいいいのと立ち上がろうとしない。ようやく立ち上がった私にお昼ご飯のおにぎりと、軽いから積んでいくんダとおみやげの昆布を持たせてくれた。
川湯温泉の電光掲示板は正午近というのに−11℃をさしている。観光客がちらほらいるなか、屈斜路湖畔を優雅に走る。
北海道の寒さにも慣れてきたし、陽射しがあるのと目的地が近いので気分はゆったりのんびり陽気だ。
屈斜路湖畔で、白鳥を見ながらおばさんのにぎりめしをほおばり、旅人を満喫している。昨日と比べると天国のようだ。
とはいっても、雪の上の20キロはやっぱり長く感じ、目的地に到着したときの感動がシミュレーションしてきて、いつかいつかと待ちわびながらすすむ。
そして、とうとうこの時がやってきた。
和琴半島の看板を発見!この気持ちを味わうために北海道までやってきたと思うくらいの瞬間がきたのだ。
下ると、そこには開けた土地が広がる・・・!最終目的地の和琴半島、和琴温泉に無事到着できたのだ。
やったぁっ、やったぁっと湖に向かって言葉に表せないつぶやきで叫び、ハンドルに頭を乗せる。この自転車と一緒にここまで来れたんだ。
出発前からたどりつけるのかどうかと不安な気持ちを押しのけながらやってきた。
頭がぼんやりして少しの間動けないくらい胸が熱くなっていたと思う。そして、自転車と湖を入れて一枚ずつ大切にシャッターを切った。
今日は大晦日、新しい年を屈斜路湖畔で迎えられるなんてなんて素晴らしいことなんだ。
心配してくださった方々、応援してくださった方々に心から感謝をする。私は、支えてくれる人たちや帰れる場所があるからこそ旅に出れるのだろう。
祝杯のビールは、凍っていたため予備の1本を露天風呂に入れて解凍した。
自転車旅に乾杯!コンロも、ガスカートリッジタイプを予備で持参していたので、今晩は温かいものが食べれる。もう、人がいなくなるのを待っていられない、タンクトップを着たままで囲いも何もない湖畔の露天風呂に飛び込んだ。
サイコー!!星空を見ながら今年の汚れを落とす・・・というよりは、目的地に到着し温かい温泉に入っている私がこの世で一番幸せのように感じた。いや、きっとそうに違いない。

☆ 平成16年1月1日 第6日目 走行距離27キロ
寒いなんて言ってられない、起きると同時にカメラを持って雪の中を走る。太陽が顔を出している。
屈斜路湖からのご来光、初日の出だ!
カシャッ、カシャッ、あ、自転車もカメラに収めよう、ドカドカドカ(テントサイトに取りに帰る)、カシャッ。
朝日に染まった湖を白鳥が横切り、その前には私の自転車。あぁ、今年はいい年になりそうだ。
何のためにこの旅に?答えなんてないし、理由もない、ただここにある私のために。無理をせずありのままにいよう、光に照らされた湖の前で本年を誓う。
昨夜のタオルなんかを温泉に漬けて解凍し、優雅に朝湯だ。
極楽、極楽。オートキャンプに来ていた人に飲み物や、雑煮をご馳走になりそれらしくお正月気分も味わった。
今日は、摩周湖に出発だ。同じく北海道を旅している友人ファミリーが宗谷岬から車をとばしてきて雪見宴会なのだ。
昨夜、摩周湖でと連絡をとったのだが聞くところによると、随分と登りがきついらしい。
まぁ、私も一日かけてゆっくり行けばいいさと、デンと構えた根性になってきている。が、やはりとってつけた根性では追いつかず、生活道具を積んだ自転車は登り坂では鉛と化していた。
友人ファミリーは、食べ物は用意するから身軽でおいでと言ってくれたけど、もともといつも持っていないので軽量化ははかれていない。
何しろ、倒した自転車を起こすにも気合を入れないといけないくらいなのだ。休憩したいが止まると30秒もすれば体が凍りそうになる。
でも、止まって休みたい。立ったまま自転車に腰掛けたり、少し進んでは腰掛けたりの繰り返しで上を目指す。
車の人に手を振ってもらうがこれ以上は頑張れず、ぜいぜい言いながら第一展望台に到着。
寒くて寒くて摩周湖を見るより何より、売店に入って暖房にあたりに行こう。
暖まると調子のいいもので、とうもろこしとビールで摩周湖の上りに乾杯だ。
そしてやっぱり、なにはともあれ自転車で来たのだから、どうしても自転車をバックに摩周湖の写真が撮りたい。
雪の階段を引っ張り上げ「摩周湖H16.1.1」の看板横に置くと、上りのつらさなんて吹っ飛び、これで来てよかったと自己満足に浸る。
この時期の摩周湖畔に自転車を置く人はそう多くはないだろう。
友人ファミリーも無事到着、タラバガニやイクラ丼など豪華食材を前に話がはずんだ。

☆ 平成16年1月2日 走行距離34キロ
今日の目的は、摩周湖からの朝日だ。テントから抜け出し、早朝のピンと張った空気の中摩周湖畔に立つ。
闇が溶け、白い山と湖の輪郭がはっきりしてくるのを見守りながら、自分と自分以外の境目がなくなり自然界と一体化しているのを感じる。
辺りは色付きはじめ、薄闇が溶けるかのように現れた摩周湖には、所々に薄氷が張っていた。
私は今、ここにいるのだ、静寂の中で全身に力がみなぎっていくのを感じた。
今日はどこに行こう。考えはしてみたけれど旅の締めくくりは、どう考えても和琴半島以外には考えられない。
他の地へ移動すれば旅が終わってしまうような気がする。
今晩は、和琴半島に帰ってゆっくり温泉につかり、旅の余韻に浸ることにしよう。勢いよく出発したが、直後にスピードダウン。
摩周湖からの9キロの下りは、寒いっていうものじゃない、もぎとられるような疼痛が全身を襲ってくるのだ。上っているときは、下りは楽だろうと思っていたのにとんでもなかった。
早く下ってしまいたいのに、冷たさと痛さに耐えられず何度も何度も止まりながら、放心状態で下りおえたところのコンビニに入りコロッケ売り場のヒーターにすりよる。
抱きしめた缶コーヒーはすぐに温度低下し、思わず別のコーヒーを買ってしまった。
温泉、温泉と心待ちにしながら昨日来た道を帰るが、今度はこいでもこいでも屈斜路湖が近づかない。
屈斜路湖まではずっと軽い登りだったのだ。正午を過ぎまたまたお腹は減るが、休憩できるような空き地もなく、もちろん店なんてないゆるい峠道とうとうもういいかと田んぼに自転車ごと乗り入れ、凍ったレトルト赤飯や凍てついたパンをかじった。
混浴風呂もなにも言ってられない。(混浴しかない)和琴半島に到着後、林を少し歩いた小屋まで暖まりに行く。
迷ったのだけれど、さすがに真っ昼間に露天風呂には入る勇気が出ない・・・こちらは、ほったて小屋で土の上に半分くらいすのこのような板を乗せただけの素朴な温泉。
屈斜路湖とつながっている天然モノ。服を解凍するのももどかしくつかると、恋焦がれ待ち望んだ思いに温泉は充分答えてくれた。
このまま朝まで入っていたい・・・この世の幸せを味わいながら、徐々に指先にも血が通ってくるのが分かる。
何もかも満たされてうっとりした気分ではあるが、ここでもナイフとフエは髪に結んで入っているのだ。
そして、一昨日と同じ場所、湖と防風林との間にテントを張り、同じように自転車と張り綱を結び、我が家で過ごす至福のひととき。
旅の余韻がじんわりと心にしみ、ここにずっと前からいるような感じがした。

☆ 平成16年1月3日 第8日目
早朝から地元のおじさんたちに交じって露天風呂に入るのが、なんだか違和感がなくなってきた。
今朝はシュラフから出るのがつらく、相当冷え込んでいるのが分かる。テント撤収に取りかかるが、全身がかじかんで作業がはかどらない。
気温は−16℃。温泉に手をつけて温めるが足は氷のように固まったままだ。
こんなことをしていてはバスに間に合わないかも・・・うずくまりたくなる気持ちを抑え、思考回路も麻痺しギュ−ギュー上から荷物を押し込んでいると、バスがガリガリガリとやってきたではないか。
旅の間にコンポも手馴れてくるのだろう、荷物を数回に分けて運び入れあわただしく女満別空港に向けて屈斜路湖を後にした。

あとがき
ガス・食料・水、これらをどう工面するかは旅を続ける重要なポイントでした。
購入できる所も少なく、水は持ち運べばすぐに凍結してしまう。
1人だと、つい食事が億劫になりがちですが、簡単な食事に温かいスープをつけるだけでも癒されました。
 あちこちで、冬の北海道を過信するなと言われもしましたが、軽んじて計画してはいなかったんじゃないかと思います。
今回は、運良く天候や地元の方に恵まれ、マシントラブルもなかったので快適な旅となりましたが、いつ何が起こっても対応できるよう心がけていたつもりでした。
単独では特に。女1人、どこで寝るか、どこへ避難するか・・・風や雪崩など天災はもちろん、自分自身の身を守ることの重みを痛に感じました。
 旅、それはより深く心に響く瞬間を求めて歩んでいくものだと思います。
進む道を自由に選び、それ自体を楽しむ。この旅を終えて、日常と呼ばれる生活の中ででも真っ直ぐな気持ちで感動を求め続ける私でありたい。イッツ マイ ライフ!