山も川も行こう10子連れ&ババ付き東北湯めぐり旅日記   


10子連れ&ババ付き東北湯めぐり旅日記   2010年6月14日〜28日

この旅の隊員は、私と2人の息子(3歳と、もうすぐ1歳)そして・・・強力な助っ人を動員した。私の母。百人力だ。
ちょっと紹介をしておこう。普通のオバチャン。だと、思う。けれど、あなどるなかれ。
私の卒業旅行にも着いてきた。20年も前!のことだわ。ハハハ。卒業旅行というのは名ばかりの1人旅。
しかし!母が言った。「私も行く!」ということで、母と2人で冬の北海道を放浪。

そして、クロスカントリースキーでの散策にも「いこかな」。なんで止めなかったんやろう?
ボテボテこけて立つことさえもできない母。なんと、スキー板を履いたことさえないとは!
私は進んだ。母を置き去りにして・・・。
ひたすら立って私の帰りを待っていた母。う〜む、凍死しなくてよかった!?
なんてひどい娘だ。
けれど、母は今でも「あの時の旅行が一番よかった」と笑っている。
娘も娘なら、母も母だ・・・と思うのは私だけかしら?

今回再び、母が言った。「私も行く」「子守りするから」。
そして、実現した「子連れババ付き東北湯めぐり旅」!!

初日、宿入りする前に
秋田駒ケ岳で雪あそび


酸カ湯自炊棟で腕前を振るう 見るからに
生唾ゴックン!
湯けむりは
たまりません
ふたりの子供も
大喜び!
母娘でどっちの料理ショー


どれどれ煮具合は
どうかな・・・
家で食べるより豪華? 小岩井牧場で
乗馬の長男
蔦温泉にも立ち寄る
機嫌良くひとりで
先を行く長男
そしてここで姿を消す
落ちた事故?現場
きれいな夕陽の中
高熱の長男を病院に急ぐ
温泉には有毒ガスも含まれ
てることもあるので要注意
洗濯モノではなく
イカの姿干(笑)

日程:614日(月)~628日(月) 15日間
行程:自宅~車で敦賀港(約280キロ)出港 ~ フェリーで秋田港到着
   秋田県と青森県をうろうろ 計1540キロ

1日目:午前4時半自宅出発
    午前10時に敦賀港から秋田港に向けフェリー出港。ヤッター!
2日目:午前5時50分に秋田港到着
    市場で朝ごはん&買い出し後、宿へと向かうが・・・。
      あまりに天気がいいので急きょ秋田駒ケ岳に登ってしまう。ワーイ!
      本日より乳頭温泉郷の「黒湯温泉」自炊棟に3連泊
3日目:大雨の中、近所でおやつやランチ。乳頭温泉郷近辺のブナ林が最高。
      黒湯温泉にとろけてしまっている。どこにも行かずこの温泉に入っていたい気分。
4日目:雨模様の中、田沢湖でのお散歩と乳頭温泉郷「鶴の湯」に立ち寄り湯。
      山の中の秘湯、「鶴の湯」に惚れこんでしまう。「黒湯」も「鶴の湯」もサイコー。
5日目:小岩井牧場へ遊びに行った後、乳頭温泉郷の「妙の湯」泊。
      洗練された心遣いにホロリ、モダンジャパニーズにうっとり。
      「黒湯」も「鶴の湯」も「妙の湯」もいいねーっ。
6日目:青森県の黒石温泉郷に移動、「青荷温泉」泊。
      ランプの宿とは言ってもまさか食べるものが見えないほど真っ暗だとは!
    毎日毎日、山道の運転で肩がコリコリ。。。
7日目:ハプニング勃発。
    宿泊予定の八甲田温泉郷の「酸カ湯温泉」近くで有毒ガスによる死亡事故発生。
      急きょ、十和田湖畔に宿をとる。
      大雨の中、十和田湖遊覧船で子どもたちはゴキゲン。私は奥入瀬渓谷散策でマイナスイオンたっぷり、お肌もプリプリ
8日目:酸カ湯温泉への通行止めが解除された!いざ、「酸カ湯温泉」へ。
     でも、事故現場からほんの100メートルほどしか離れてなくてびっくり。
    途中で「蔦温泉」に立ち寄り湯、忘れられない味に出会う。
9日目:八甲田山ピクニック。登山道は有毒ガスの影響で立ち入り禁止のため、散策路でお散歩。
     一目見て気に行った「酸カ湯温泉」に4連泊することに決〜めたっ。
10日目:青森の市場で新鮮な魚介類に舌づつみ。
    もちろん、ウニにホタテにホッケ等々たんまりと買い出し。
11日目:昼間から浴衣でお色気ムード!?(なワケないやん)。温泉に来ると浴衣で廊下を歩きたくなる              のは何でなんだろう。近所のお散歩と温泉三昧でのんびり。
12日目:秋田県の八峰町まで移動。Rが高熱を出した!にも関わらず白神山地の十二湖でボート遊び。 
      結局、40度を超えたため、夜に病院へ。ご近所さんの親切に助けられる
13日目:療養日
     近くで昼ご飯を食べたり、目の前の海岸で貝殻拾い。
14日目:早朝5時半に秋田港へと向かう
     午前9時、秋田港からフェリーで敦賀港へ出港。Rの高熱が続き、少し心配。
15日目:午前5時半敦賀港着岸。
    お腹をこわしてても、高速道路はどこでも止まれへんのや。頑張れ!と励ましながらパーキングごとにトイレダッシュ!。
   やっとのことで昼頃に自宅着。おつかれさま〜っ。

 1日目(6月14日)
「湯治に行く」
何となく冗談半分で言っていたのが、いつの間にかすっかり本当に湯治モード。自分でも「え?湯治に行くんやろ?」って感じ 。初めは単に、東北へ遊びに行こうって思ってただけなのになぁ。
この際、入って入って入りまくって、ゆでダコになるぞー。目標は1日3回!目指せ、デトックス!?

ところで、旅行に行くのが楽しくなったのは何歳くらいからなんだろう?
3歳になったRは、お年頃。最近、家で寝るのがお気に入り。しかも、出発の時に「父ちゃんも行く?」って不安な顔。
うーん、何も知らないまま早朝4時半に車に積み込まれたら、そりゃ「???」だわな。昨夜に伝えたほうがよかったかな?でもなぁ、興奮して熱でも出されたら・・・。もうすぐ1歳になるKだって手ごわい。話ができない分、カンはするどいはず。
こっそりと準備して、そーっとそーっと息をひそめるようにして今朝の出発を待っていたのだ。フェリーに乗ってしまえばこっちのもの!フフフ。
そう。とにかく、フェリーに乗らねば!

そして敦賀港。定刻の10時きっかりにフェリーは出港した。バンザーイ。
フェリーはいいなぁ。旅人って感じやもん。1人で勝手に今に酔っている。
これからも色んな山に登りたい
色んな魚を釣りたい
全国を旅したい
簡単にできそうな気がするし、そうしていくんだろうなとも思う。
あ〜、なんだか思考がむちゃくちゃになって眠くなってきた。
フェリーはいいなぁ。寝ている間に着くんやもん。

 
 2日目(6月15日)

朝起きれば秋田県民。AM5時50分、秋田港着岸。
こんなに朝早くに着くのはもちろん。。。市場に行くためでないかい?。
秋田市場に直行だーいっ。
市場の中の食堂って安くておいしいんだもんね。朝からドドーン(丼!)とイクラ丼に海鮮丼。ホホホーイ、秋田に来た来たって感じ!
今夜から3連泊する乳頭温泉郷付近に店はないらしいし、新鮮な魚をたんまり買い出ししとかなくちゃ。魚も貝もルルルル〜ン。
ムム?市場って肉や野菜もあるやん。ジャガイモや玉ねぎ、人参やほうれん草まで持ってきたのにぃー。
頭の中はすっかり「秋田 イコール 新鮮な魚」だったワ・・・。
それはそうと、本州最先端はすぐそこやというのに、暑い!緑もまぶしいピーカン。
明日からの天気を携帯でチェックすると。。。ガーンッ!
明日の降水確率は80パーセント。それ以降も50パーセント以上ばかり。ガガーン・・・。
もしかして梅雨入り?

目の前には秋田駒ケ岳。
「カモ〜ン」。って今、呼ばれたような。
ああっ ダメダメ 車が8合目に向かって走っていく〜
この山、乳頭温泉郷への道をちょいと曲がったら8合目に行けるのだ。あ、もう曲がっちゃったもんね。行くんだもんね〜山は早立ちが原則って?そんなん知らん知らん。
昨日の早朝家を出たから疲れてるんじゃないかって?明日ゆっくりしたらええか。
まったく。山が見えるとじっとしていられない私。しかも貴重な晴れ間と思うとウズウズ。
そんなことなら、市場をスピードアップして見ればよかったのにって。ハイ、そのとおり。
8合目の駐車場でザックに朝食の残り飯(市場で残したご飯を持ってきたのだ。旅では必須、普段はしません)と、市場で買ったみそパンを詰めて、駐車場でズボンを履きかえて、ハイ 出発。行くと決めたら早いのだ。
ところで、登山口はどこ?

ウキウキ ウキーッ!
って、まるで野生に戻った猿の一団。家族そろってウホホーッって山を駆けあがってる。
自由だー、やったーってね。
だって、昨日の早朝から丸一日以上フェリーと車に閉じこもってたんだもん、久々の地上に大興奮。
思いっきり野猿化するぞーい。

一時間ほど登ったところで、道を雪が通せんぼ。いわゆる雪渓のトラバースってやつね。
あ、やばいな・・・。「今年は残雪が多い」ってレンジャーの人もいうてたけど。
Rの手をつなぎ、背中のしょいこにいるKと一歩ずつ進む・・・。ツルツルツルンッ Rの足が宙に浮いて私にぶらさがっている。滑ったら遥か下までまっさかさまだ。
「しっかり!」「トラロープ(黄色と黒のロープを私はそう呼んでいる)持って」と言ってはみるものの、届かないときたもんだ。ツルツルンッ
こりゃ〜あきまへん。半分を残してUターン。「ただいま〜」

山頂へ行く代りにみんなで雪合戦。「冷た〜い」って大はしゃぎ。
私は花の写真を撮ってみたり。
ふふふ、へへへ、ほほほ。なんだかえらくなった気分。私、山を楽しむのがうまくなったんじゃないかな。あ、もしかすると、今を楽しむのがうまく・・・なっているならうれしいなぁ。


3日目(6月16日)

牛乳が飲みたい〜
湯上りにゴクゴクゴクッっと。
覚悟はしてたけど、店がない。
ただ一軒ある酒屋に望みをかけて、立ち寄る。「牛乳ありますか?」
「ウニャラカウニャラカ」
「え?」
「ウニャラカウニャラカ」
「え?」
このやりとりを3回繰り返した後、年老いたオジサンは立ちあがった。「ウニャラカ」。多分、「分からないんだな」っていう意味のことを言ったと思う。そして、奥の冷蔵庫の前へ連れて行ってくれた。
・・・異国や。
ここは、異国や。ここの言葉もさっぱり分からん。

それはそうと、ここは秋田県の乳頭温泉郷。唯一、自炊棟のある黒湯温泉にいる。
出発前、実家にあった古いガイドブックを見てたら私の字でチェックが入れてあった、乳頭温泉郷。何年たっても行きたい場所が一緒って、なんかうれしい。
そして、念願かなった黒湯温泉。ずぶずぶずぶっと温泉につかって、思わずうなった。
「ぷふぁぁぁ〜 サイコー」。
とにかくええ。こりゃ史上最高かもしれん。

ホンマに「ええかんじ」な時って、「ええかんじー!」としか言いようがない。何でとか理由とか言葉では説明できない。とにかく、全身全霊で「ええかんじーーー!」。
何回でも言うで、「むちゃくちゃええかんじーーー!」

きっと、もっと年を重ねたらここに来ると思う。
そんで、囲炉裏付きの自炊棟に泊まって周りのブナ林をフラフラほっつき歩くと思う。もし足が痛かったら、黒湯温泉の周りだけ散歩して黒卵を食べて、絵を描くと思う。
そして、この温泉に(なぜか露天よりも内湯が気にいった)浸かりながら、今日のことを思い出すと思う。
大雨の中、ドライブしてシュークリーム買ったなとか、お昼に食べたきりたんぽおいしかったなとか。


4日目(6月17日)
今日もまた雨模様。地元産サクランボを買っておやつにしながらドライブしてると、ハクチョウやフラミンゴが浮かんでいる。なんと熊のプーさんやドラエモンまで・・・って、田沢湖の足こぎボートの話ね。
この屋根付きボートなら雨もへっちゃらさ、いざ出港!ボートにたくさんついてくる魚に、エサ(おまけにもらった)を撒く子どもたち。って、
Kは食べてるやん。コリャーッ。

あいかわらず天気もいまいちで散歩もできないし、鶴の湯にでも行くか。って、何となく行ってみると。
ガタゴト ワクワク ガタゴト ワクワク!未舗装路6キロ、これは期待大。
そして、着いた鶴の湯。わぉ!時代がタイムスリップしたみたい!
黒湯が最高と思ってたけど、ここの露天風呂でもうならずにはいられない。う〜ん、最高。広くて開放感いっぱい、山の中で入ってるみたい。しかも、日帰り入浴も人でいっぱいと聞いていたのに、貸し切りなのだ。
あ〜うれしすぎて泳いでしまいそう。遊泳禁止って?ハハハ
実はここに泊まりたかったけど予約が取れなかった。温泉だけ入りに行くにも、あまりに黒湯がよすぎて行く気がなくなってたんだけど。雨に感謝、やな。
とっても、もうけた気分。ラッキー。
また泊まりたい所が1つ増えたなぁ。



◎今日の昼飯
  稲庭うどんと味噌たんぽ
◎今日の夕飯
 マスムニエル(なんと3日連続。要は欲張って買い過ぎたってワケね)
 マスシチュー(ここでもマス)
 イカ焼き(これも3日目。残り物消化なワケね )
 じゅんさい(サッと湯がいて酢みそで。グー!)
 えご草(ところてんの親戚みたいなやつ。酢みそで。)
 子ども用に野菜炒め


5日目(6月18日)
朝風呂に入らないと1日が始まらない。ムクッと起きたと同時にタオルをつかんで温泉へ向かう。ムニャムニャ フラフラ 寝ぼけたままチャプン。
そして、うなる。「ふぁぁぁ〜」
シャワーもなくて、浴槽だけ。これがまたいい。シャワーどころか水道さえもなくて、あるのは浴槽のみ。この浴槽に惚れこんでしまっている。
もしかすると、私はシャワーのない温泉が好きなのかもしれないなぁ。

今日は子ども孝行?と思って行った小岩井牧場。
わざわざ「子どものために」と思ってすると、案外よくないのかも。温泉をぶらぶらしているだけでも子どもたちは充分楽しんでるし。

しかも、楽しみにしていた牛の乳搾りや動物とのふれあいは口蹄疫の影響でできないときたもんだ。下調べが甘かったかなと思ったけど、何もかも調べていくのも楽しみがないし。子連れで全く下調べなしで行くのもキビシイもんがあるし、このバランスがなかなか難しい。
残念だけれど、宮崎県は大変な事態になっているのだものなぁ。

ちなみに「孝行」という言葉を辞書でひいてみると、ない。「孝行」は親にするものらしい。
当り前か。私は子どもたちの時間を一緒に楽しませてもらってるんやもんな。
私の母を見てるとナルホドと思う。
孫と同じ目線で、なにもかもを楽しんでいる。「ばあちゃん、向こう行って」と言われても、「行かへーん」と笑い飛ばせる力がある。孫の怒った顔に、吹きだして笑っている。

今日は黒湯のすぐ近く、同じく乳頭温泉郷の妙の湯に泊まる。
モダンジャパニーズという妙の湯。この「モダンジャパニーズ」って、どんなもんなんかいな。なんだか、新しい世界が待っているような。。。
驚いたのは料理の器。料理が運ばれるたび「わぁぁ〜ステキ」。1つ1つの器を手にとって眺めまわさないと気が済まなくって。もちろん、お味も!。おまけに、子どもたちのテーブルまで漆塗りのお祝い膳みたいなのを2段重ね。なんともシャレテイルのだ。
そして・・・
「マンマー」とよだれをたらしているKの口にスプーンを運んでいる私に、仲居さんが笑顔で言った。「食べさせましょうか。」「お母さんはたまにはゆっくり食べてもらったら」。
わたしゃ、うれしくて涙が出たね。丁重にお断りはしたけれど、「モダンジャパニーズ」は取って付けてできるもんじゃなくて心の奥から出てくるもんやと思った。

「年を重ねただけでは人は老いない 理想を失うときに初めて老いる」
泊まった部屋の前に飾ってあったこの額。何度も聞いたことのある言葉が、今はスッと私の中に入ってきた。
何となく、今をきちんと生きようと思う。色んな事を笑い飛ばして、シャンとしていようと思う。


6日目(6月19日)

このブナ林をいつまでも見ていたいと思う。
あまりにも乳頭温泉郷までのブナ林がきれいで、先の目的地の白神山地に行かなくてもいいような気になっている。
世界遺産じゃなくてもこんなにいい所があるんだな。
乳頭温泉郷に後ろ髪引かれながらも、八幡平を抜けて黒石温泉郷のランプの宿、青荷温泉へと向かう。
食事付きの温泉に泊まりたいという母の希望で、昨日と今日の2泊は食事付きにした。これはこれで楽チンで、残りの日々を自炊するのが億劫になりそう。だけど、Kの離乳食を作ってやらなくちゃ。
だって、食事付きの宿では毎食豆腐、豆腐、豆腐。幸い喜んで食べてるけど、そろそろ「トーフばかりかい!」と気付かれそうな・・・。だって、レトルトも大人用の味付けも食べないんだもんねぇ。

対向車(一台もなかった)と、山道にビビりながらずんずんずんずんやってきた山奥の一軒家。ふぅぅ〜、運転に肩がコリコリ。
でもここはまるで山奥のテーマパーク。(私たちにとってはネ)
広い敷地に、BGMは川のせせらぎ、吊橋を渡って林の探検、川向うの露天風呂では岩の滑り台ってね。
林の散策路は、秋田フキもあったりなかなか楽しい。広い敷地を散歩しながら、探検ごっこ。
明るくても懐中電灯を持って、「隊長!何か発見しました!」「アレハ ナンダ!」とか本当にやっている。しかも、かなり本気で。他の人が見たらかなりアヤシイ。
ちなみに我が家では、普段から懐中電灯のことを「タンケン」と呼んでいるのだ。
おっと、温泉のはしごもしてちょっとのんびりしすぎたみたい、辺りはもう薄暗い。
慌てて夕飯を食べに行くと、何ちゅうこっちゃ!暗くてご飯が見えん。いったい、今食べたのは何?母に聞いても「さぁ?」。うぅ〜む・・・。
〈 教訓:青荷温泉に泊まるなら、夕食は出てくる前から座って待つべし 〉
だって、ここは電気のないランプの宿。隣のカップルが「明日行くところを調べようと思ってたのに何も見えない!」
何で、こんなに不自由な場所に人が寄ってくるんやろう。しかも、若いカップルも泊まっているのは驚きだ。まぁ案外向こうは、子連れなんて驚きだと思っているかもしれないけれど。

「ガツン」母が、天井から下がっているランプにぶつかっている。ひぇーっ、やめてよう!「ガツン!」イテテ、今度は私がぶつかった。
手動の懐中電灯はRがおもちゃ代わりに独り占めしている。一部屋に1つじゃなく、1人に1つ欲しい。
もちろん、携帯の電波は届かない。そういえば、出発してからからほとんど電波の立つ日がない。毎日そうだったから慣れてしまった。
電波の立った時に夫に無事だと連絡すると「連絡がないのが元気な証拠。」と言われる始末。生きてるかどうかくらいは気にしてほしい。


7日目(6月20日)

「酸カ湯へは行かないほうがいい」
十和田湖遊覧船乗り場のオジサンが車の外から叫ぶ。どしゃぶりの雨で、車の中にいると声も聞きとりにくい。
「なんでですか?!」叫び返す。
「有毒ガスで人が死んでいる」「近づかないほうがいい」
ずぶ濡れになりながら、オジサンは言った。何が何でも伝えといてやらなくちゃ、そんな気配がヒシヒシと伝わってきた。

「人が・・・亡くなった?」「いつ?」「どこで?」「どういうこと?」
血の気が引くのが分かる。酸カ湯温泉へはまさに今向かっているところだ。
どうしよう・・・と思っている場合ではない。とにかく、すぐ目の前の観光協会を見付け、飛び込んだ。
「酸カ湯の近くで」「今朝」「子どもが・・・」「道路も通行止めになっている」
さっき、昼のニュースで流れたという。
ゾクゾクッ・・・両腕に鳥肌が立った。
有毒ガスで・・・そんなこと考えたこともなかった。あまりの鳥肌ぶりに「見てください コレ!」なんて、観光協会のお姉さんに見せてしまったくらいだ。
通行止めになっているのに行って、有毒ガスを吸ったら・・・。万が一子どもたちに何かあったら・・・。
考えただけでも息苦しくなる。観光協会の中で「えーっ」とか、「そんな・・・」とか1人でアワワワワワ・・・とアタフタしている。
じたばたしても仕方がない(もう充分じたばたしてるっちゅーねん)、観光協会から酸カ湯温泉に電話してもらい、正直な気持ちを伝えてキャンセルさせていただいた。
今日から3泊の予定だったけれど、とにかく今夜は十和田湖畔に宿をとる。
明日には明日の風が吹く。
少し落ち着くと、そんな風に思える。予定通りに進むより、案外予定変更のハプニングに燃えてしまう私なのだ。

子どもたちは予定外で十和田湖の遊覧船に乗れたのでゴキゲンだ。私は私で、奥入瀬渓流のたっぷりなマイナスイオンでお肌もプリプリ!?新緑と渓流のコラボにムクムクとパワーをもらってしまっている。どうせ観光地でしょなーんて思ってたのを撤回!やね.
降水確率90%なのに、奥入瀬渓流だけ雨が上がってたのはテルテル坊主のおかげかな?

今日の宿は、観光協会で紹介してもらった民宿。なのに管理人夫婦がぶっきらぼうで、あんまり歓迎されていないのかな?と思い、少しへこんだ気持ちになる。
でも・・・コインランドリーの場所を尋ねたら、手招きで自宅用の洗濯機へ案内してくれ、おまけに乾燥用にとボイラー室まで空けてくれた。大量の洗濯物にびっくりして、慌てて自宅用の洗濯物をのけてくれるオバサンがかわいらしくて笑ってしまった。この時も、オバサンもオジサンもニコリともしないのに、とても親切にしてくれているのは分かった。
後から思ったのだけれど、聞きなれない言葉がぶっきらぼうに感じさせたのかもしれない。人は見かけにはよらないのだ。


8日目(6月21日)
朝から管理人夫婦と一緒に新聞を読む。トップページは、もちろん・・・。
オバサンがバス会社の社長に電話して、道路の情報を聞いてくれている。「ンダ ンダ」「ホニャダホニャダ ンダ ンダ」さっぱり何をしゃべっているのか分からない。切った後も、「ンダ ンダ」と夫婦で首を縦に振って納得している。私にも「ンダ!」。
どうやらまだ、一般車両は通行止めらしい。ということだけは、分かった。
一度部屋に戻っていると、ノックの音。
「今、通行止めが解除されたと連絡がありましたよ!」(関西弁訳)と、オジサンの興奮気味の声。
「ありがとうございます!」私も声がうわずる。
通行止めが解除されたということは、危険がなくなったと思ってええよね?
よしっ 行こう!
だって、行けないとなると行きたくてたまらなくなるのが人間じゃない?。
酸カ湯温泉の代わりなんてないよ〜と思ってたから、やったー。でも、目に見えない有毒ガスにちょっぴり残る不安。でも、行きたい。行こう。
ニコリとも笑わず管理人夫婦が言った。「また何かあったら戻って来い」「台所を貸してやるから自炊していいよ」(もちろん関西弁訳)

奥入瀬渓谷の上流からずんずん山の中に入っていくと、いかにも老舗の温泉という感じの風格ある蔦温泉がふと現れる。山道の途中にこんな所があるなんて、さすが青森県だなぁ。しかも、腹ペコだった私たちは蔦温泉の存在に大感激。バンザーイ!
みんなが知っていてもあえて、オススメ度100% 「おいしいものも食べれる秘湯」と呼びたい。おいしいものに弱いのだ。
シャモロックとかいうこの温泉に似つかわしくないハイカラな名前の地鶏丼で腹ごしらえをし、いざ酸カ湯温泉へ。いい温泉にも会えたしお腹もいっぱい、気分は上々!
と思ったら・・・アレレ?またまた十和田湖かい!?
ハイ、スンマセン。これが山なら道迷い遭難ね。
我ながら途中で気付いてほしい。。。山道ってどこも同じようなんやもん、って言い訳無用。
Uターンね・・・。

パトカーにおまわりさん。張られたロープ・・・。目の前には酸カ湯温泉。って、ホンマに目の前やん。
通り過ぎる気にもならず、おまわりさんに情報を尋ねると、やはりここから入山されたとのこと。
おまわりさんいわく、昨日有毒ガスがたまっていた窪みには今日はない。他の所から出ている恐れもあるから入山規制をしている、とのこと。
有毒ガスはその辺りに散らばったということ?と尋ねると、有毒ガスは普段からも出ているもので、風のない日は特に窪地にたまりやすいんだそうな。
温泉と人との共生の難しさを、知る。


9日目(6月22日)
事故の衝撃を忘れてしまうくらい、酸カ湯温泉の中は生き生きとしている。
自炊棟の調理場も、ホタテあり魚あり、山で採ってきた山菜あり、あ、よだれが・・・。失礼。ホタテなんて1キロ150円で買ってきたとか。あ、またまたよだれが。
山菜の天ぷらをいただいてパクリ。テヘヘ、指をくわえて見てたんだろうなぁ。
ここは、にぎやかというよりも活気があると言ったほうがぴったりかな。
ここの台所は、何とお湯が出る。レンジもあるし部屋には冷蔵庫もある。決して快適さを求めているわけではないけれど、そう、要は居心地がいいのだ。しかも、浴衣まである。温泉に来ると浴衣で廊下を歩きたくなるのは何でなんだろう。

母が「部屋に鍵がある」と喜んでいる。はて?黒湯温泉では・・・?鍵はかからなかったらしい。
らしい・・・とうのも、私は鍵の存在さえ気にしていない。母が来てくれているおかげで私はゆるみっぱなしのユルユルだ。

ここに居座ってしまうんじゃないかな。一目見たときからそう思ってた。
10泊してもいいくらいの気分。ということで、得意の予定変更!他に行くつもりだった所はパスして、帰りのフェリーから逆算。
「4泊お願いします!」。って延泊の予約をしたら、とっても晴ればれ。うほほ〜い、ばんざーい。
居たい所に居れるのは、最高にうれしい。

車で10分ほどの八甲田ロープウェイに向かう。今日はお山にピクニックなのだ。
でもやっぱり・・・。八甲田山は有毒ガスの影響で登山は禁止、散策コースだけはOKとのこと。予測はしていたけれど、ちょっぴり残念。登りたかった山が一つだけあったのだ。単に山の名前が気に入っただけなんだけどネ。
でも子どもたちは、大ハリキリ。と言うのも、平地のお散歩は好まないR、散策コースでもここはRにとって「YAMA」らしい。

エゾ松や高山植物に囲まれた1時間コースをお散歩。「母ちゃんはね、お山が大好きホントだよ〜」なんて、歌まで飛び出して。かくれんぼもなんでもあり、標準時間の倍は楽しんでいる。
しかーしっ!
ここで、この旅一番の事件が発生!
名付けて「消えたR事件」。
そう、消えたのだ、Rが。迷子ではない。
沢底へ・・・!。
「ワーン ワーンッ」。叫び声は聞こえるけれど、見えるのはバタ足する足のみ!
ありゃーっ、沢底に頭からダイブ!。
慌てて飛び込もうとするけれど、背中にはK。あたふたしょいこを下していると、60歳になる母が橋から飛び込んだ。ちゃんとカメラを置いて行ったのはナカナカ エライ。
救出大作戦、成功。
受け取って撫でまわしても、擦りキズのみ。沢に水が少なかったのと、たまたまドロの所に突っ込んだらしい。どろだらけのラッキーボーイだ。
救出隊の母は、びっくりしすぎて涙がポロリ・・・。腰が抜けて座り込んでしまっている。「寿命が縮まった」らしい。
その横で対称的に子どもはたくましい。満足するまで泣くと、あっという間におどけている。涙をぬぐう母の帽子をかぶって「カワイイ?」な〜んて。
う〜ん、これじゃ多分また落ちるで。。。
教訓:木の橋は滑りやすいので走るべからず!


10日目(6月23日)
よだれをたらしているだけはゴメンだー。
酸か湯温泉の自炊棟は、ホタテも魚も山菜もごろごろしている。慣れたもので、みんなしっかり買い出ししてきてるのだ。
ということで、今日は青森の市場へ買い出し。
ウニにホタテにホヤ、子ども用にメバルやホッケもGET。
市場の中にある食堂で寿司を食べながら母と交代で買い物。子どもたちは、お子さまスペースで転がりまわってご機嫌だ。
魚もいいけど、東北に来てからなぜか漬物に心奪われている。
普段はあまり食べないのに、たくあんのスモーク(いぶしたやつ)「いぶりがっこ」や赤カブ、しかもつかりすぎたようなのがおいしく感じる。ふきのとう味噌やこしあぶら味噌にもはまって、塩分取り過ぎ警報が鳴るくらい食べまくっている。
体が「東北人」になってきてるのかしら。

酸カ湯名物の千人風呂、確かにデカイけど、千人も入るのはちとキビシイんでないかい?
でも!例え男性陣が千人いたとしても?混浴ももうへっちゃらだ。ここに来てから、ずっと混浴に入っている。初日にめげていたら今も女風呂に通っていたと思う。男性陣のスリッパがあれば通り過ぎて。
でも、夜中にも早朝にもかなり通ったけれど、千人風呂を独占することはなかった。男性陣が来ないのを狙っているばかりでは、多分いつまでたっても入れなかったわけだ。
実は初日、混浴に入ろうとドアを開けたのだけれど・・・、男性陣を見たとたん扉を閉めてUターン。トホホ。勇気がない(涙)。
浴衣をはおってスゴスゴ女風呂に向かう途中、諦めきれず「混浴には行かれませんか?」と後から来た人を誘ったのだが、「男の人がいるから女風呂に行きます」。ガックシ。
だけど、ふと振り返ったその人が言った。
「2人やから、がんばりましょか!」
よっしゃー、風呂(旅)は道連れだぁー。
その人は、80歳は超えたオバアサン。2人で「見えないように・・・」とかがんで、御簾のような入口から「ガンバッテ」入る。
私も・・・80歳になっても、「恥ずかしい」って思っていたいし思えるような人でいたい。
千人風呂の隅っこの御簾の陰で小さくなって入っているんだけど、気持ちは万人風呂!なんで、こんなに開放感があるんだろう。
入れば入るほど、皮膚から温泉が入ってきて体液が温泉と入れ替わってきている。
と、本気で思っている。このお風呂のとりこだ。


11日目(6月24日)
 ちまたは「癒し」ブーム。
みんな癒されたがっているし、温泉にも癒されに行くんだとか。
でも、以前からその波に乗りきれてないなぁという感じがしていた。
別に癒してもらわんでもええけどなーって。
癒されてるより、ガツンと遊びたかったり。毎日のんびりしてるからそう思うのかな。。

ま、癒されるために温泉めぐりをしてるわけじゃないんだけど、だんだん温泉崇拝者?になってきているのは確かだ。これはアヤシイ!と思っていた「温泉相談室」が気になってきた。温泉に入りに行くたび横目で見るのだけれど、ピタリと扉が閉まっていて中は見えない。中はどうなってるんだろうとか、何を教えてくれるんだろうとか思い始めると、とうとうたまりかねてガラリ、と扉を開けてしまった。
中には、ナース服を着た眼の大きなお姉さん(って、看護師さんか)と、パソコン。まぁ、どこにでもありそうな光景。そして、「どうされました?」と大きな目で聞かれ、ウウ・・・と言葉に詰まる。「入ってみたかった」とは言えない。
「症状は?」とまたまた聞かれ、「冷え症!」。あ、よかった。答えられた・・・・。
冷えには、二酸化炭素・鉄・硫黄の泉質がいいんだとか。ふむふむ、とりあえずメモっとくとするか。おや?、そんなことならビールをやめればいいんでないかい?・・・・・・・・(返答ナシ)

いやはや、この旅はもしかして、いつか来る「湯治場探し」の下見旅なんじゃなかろうか。

今日は何もしない日。お昼寝日。
近所を散歩し、お昼もひやむぎをゆでて食べる。毎日根曲がりだけのおでんを、夕方に半額になるのを狙って、今日は五平餅も奮発した。
もちろん昼間から浴衣でウロウロ。入りたくなったらタオル一本持って温泉へ。
長い廊下を浴衣を着て歩く自分がうれしくて、窓にうつる姿を見てうっとり?(言い過ぎ!)こういう時、あぁ私って日本人なのねぇと思う。
ここは自炊棟にもかかわらず、部屋に浴衣がある。着れてうれしいし、おまけに寝巻を洗わなくてよい。あっぱれ、浴衣!なのだ。
洗濯といえば、洗濯物チェックは鼻が肝心。臭いをかいで「OKサイン」なら翌日また着る。嗅ぐともう着られないので、わざと臭ってみないものもアル。寝巻は一度「OKサイン」を出してしまうと、次の洗濯まで着続けるはめになるからナカナカ厄介者だ。

我が家にご飯粒マンがいる限り・・・って。我が家の1歳児、食事が終わると服だけじゃなくて頭にまでご飯粒。その手で私に触るなーって、ムリやね。親子でご飯粒マンに変身!
こっちはふきんを持って床を這いずりまわっている始末。思えば、離乳食の一番大変な時期だった。今日も小さなTシャツが洗濯機でたくさん回っている。

12日目(6月25日)
ピピッ ピピッ ・・・39度。
朝五時、Rの脇に挟んだ体温計。
触っただけでRの体が熱を持っているのが分かる。
あちゃー、出てしもた。どうすべ・・・。
あさっての早朝には秋田港にいないといけない。
比較的ケロッとしている今のうちに移動するべし。今日の目的地である秋田との県境、八峰町までナビタイムで5時間。
とにかく、元気なうちに先へ。午前7時、4泊した酸か湯温泉を後にする。

鯵が沢のイカ焼き街道(勝手にそう言っている)でイカ焼きをほおばり、白神山地の十二湖までやってきた。高熱で真っ赤な顔をしたまま十二湖でボートに乗りたいとごねている。乗せる親も親なのだけれど・・・手漕ぎボートに乗ってしまった。白状すると少し私も乗りたかった。ほんの少しだけど。

熱は下がるどころか40度を超えてしまった。
「明日まで様子を見る」という私と「病院へ行ったほうが・・・」という母。私は元々、子どもをあまり病院へ連れて行かないほうかもしれない。大丈夫とは言うたものの、行っといたほうがいいのかなという思いも捨てきれない。旅に連れてきているという後ろめたさがチクリ、と胸を刺す。

結局、「安心」を買いに?夜間小児科へ向かう。しんどい子どもを連れて、片道40分の道のりは長い。無理して病院へ連れていくよりもゆっくり寝かしてやった方がいいのかもと思いながら、知らない道を無言で進む。日本海に沈む夕日がここは旅先だと物語る。なぜかグッとくるものがあり、思わず車を止めてシャッターを切った。
病院で「眠たい、眠たい」とごねていると、医師が「関西か?」。そう、ここは秋田県。
それはそうと、眠たいって関西弁なん?秋田では眠たいことをなんていうんだろう。
なんだかんだで、往復2時間半。ふうぅ・・・。
宿に戻るとテーブルにはおいしそうなメバルの煮つけ。なんと近所の人からの差し入れだとか。「元気になるように」って。ホロリ、ときたね。
しかも、キンキンに冷えたアイスノンまで届いている。大家さんを筆頭に、近所の人が入れ替わり立ち替わり覗きに来てくれたらしい。
「安心」って、案外大事なのかもしれない。周りが安心すると、子ども自身も安心するんやな。
アイスノンを枕にして丸くなっている背中を見ながら、頑張って病院へ行っておいてよかったんやな、と思った。
それはそうと、メバルってこんなにおいしかったっけ?。寝ころんだままの口に一口入れてやり、後は私がしっかりいただいといた。母の元気は子どもの元気!ってね。


13日目(6月26日)
「大丈夫ですか?」
窓から子連れのお父さんが覗く。
きっと近所中で知らない人はいないんだろう。
というのも、昨日アイスノンを持ってきてくれたおばさんが、凍っているアイスノンを探して近所中に聞いて回ってくれたらしい(オバサン家のは凍っていなかった)。しかも、夜にはゼリーの差し入れまであった。
いい所に泊めてもらったな、そう思う。人は思っているだけより行動を起こしたほうが、より心が通じるんだなぁと思う。
それはそうと、子連れだとモノをもらう確率が高いような気がするなぁ。それだけじゃなくて、話しかけられたり、助けられる確率も格段にアップする。
子連れヒッチハイクとかしたら、日本一周くらい軽くできてしまうんじゃないやろか。

ここは、体験型の宿泊施設。農林漁業体験交流施設というところ。
泊まっているのは私たちだけで、我が家のようにかなりくつろがせてもらっている。
今日はゆっくり療養日、車で5分のハタハタ館で昼食を食べ、さぁ昼寝。こどもたちが寝たら、おやつにしよう。ちゃんと買い出しの時に、ムギマキとかいう地元のおばさんの手作りおやつとイカ焼きを買ってきているのだ。

白神山地の散策は次回におあずけだけど、きっとこれでいいんだよね。
それにしても今回は、白神山地の二ツ森も秋田駒ケ岳も八甲田山も・・・山には恵まれなかったなぁ。ま、ええんやけど。
と、残念でもないのに、行く先々で登れる山を探しているのも事実。旅先で子どもたちと山に登ることは、一種のスパイスみたいなものだと思う。なくてもいい、でも、あればとてもいいもの。
私1人で行く山なら・・・登れなかったらすごく残念に思うだろうな。そんな、ガツンとした山行きにいつか1人で行きたい、とも思っている。

夕方、目の前の海へ貝殻を拾いに行った母が帰ってこない。
多分・・・と思っていると、フラフラになって帰ってきた。とてつもなくウォーキング?徘徊?してきたらしい。
やっぱり。
迷子になっていた。しかも、宿の名前を覚えていなかったから「3人に聞いたけど誰も知らんかった」。どう考えても、聞き方が悪かったとしか思えない。
私の方向音痴は間違いなく遺伝や・・・。


14日目(6月27日)

いよいよ帰るんだ、と思う。早朝5時半に宿を出て、敦賀行きのフェリーに乗りこんだ。
あっという間の2週間で、まだまだ帰りたくない。けれど、高熱のRのために帰ってやれる、とも思う。

私は根っから、1人の時間が好きなんだなと思う。今日も、フェリーに乗ると「1人になりたい病」を発病。
気ままな空想の中に浸って、ふわふわしているのが好きなのだ。
この行き帰りの道中のふわふわ感が、なんともいえず旅心をコチョコチョッ・・・とくすぐる。
寝れずにぐずってるのはかわいそうなんだけど、そろそろ寝てほしいというのが正直なところ。
だって、旅の終わりくらい1人でこの旅を振り返りたい。
このまま現実に戻りたくないよ〜。
そう思いながらも、真っ赤な顔をしてハーハー言っているのを見ると、せつない。
とにかく子どもたちが元気にならないと、終わる気になれないな。要は、元気でさえいれば、何があっても「結果オーライ!」なのだ。
熱が下がれば、きっと何もかもひっくるめて「コレデ ヨカッタ」って言うんだろうな。
こうしながら子どもも、だんだん強くなっていくんだろうけど。
そして、またきっと懲りずにどこかへ行くのだ。


15日目(6月28日)
「100円寿司に行くのー!?」
高熱に加え、お腹をこわしてフラフラのRにリクエストされたら断れない。
家に帰っても冷蔵庫は空っぽやし、近所で食べて帰るとするか。
けれど、新鮮な魚介類に囲まれていた直後に、回る100円寿司かい!?
Kの納豆巻きの残りと、うどんにしとこ・・・。

それにしても、フェリーが敦賀に着いてから約280キロ。
お腹をこわしてても高速道路はどこででも止まれへんのや(スンマセン、普段なら穴を掘って『野●そ』もアリなもんで・・・。田舎やから・・・とかなんとか言い訳したりして。いやはやスンマセン・・・)。パーキングごとにトイレダッシュ!
やっとこさ帰ってきた。よくがんばったなぁ〜。ふぅぅ〜。
それにしても!毎回トイレ騒動は勘弁してほしいワ・・・。

いやはや、毎日こんなバタバタ劇が当り前になっている私。
1人旅ができる環境になった友人が「毎日コレ!?たまらんな〜」って笑う。
そういえば私も思ってたなぁ。子育てしてる友人たちを見て「たまらんな〜」って。その時々置かれた環境によって、その時々の思いがある。

でも、私はどこにいても私。どんな環境にいても私。これからもずっと、私。
私が私である限り、私はずっと思ってるんだろうな。「コレデ イイノダ!」

家に帰ると・・・
おっとー!
出発前に部屋にあったファンヒーターが片づけられ、いつの間にか扇風機になっている。青森はまだストーブがあったぞ。
それだけじゃなくて、家がツンと他人の顔をしている。生活感がないというか・・・ガランとしているのだ。そうか!これはすっきり片付いているのだ、と気付いて1人でうなってしまう。うぅぅ〜む・・・。
夫1人所帯の方が家がきれいだとは・・・。素直に喜べないのが悲しい。トホホ。
早速、子どもたちが、泣き叫んでいる。家に帰ってきてホッとしたんだろう。ヨシヨシ、いっぱい泣いていいよ。
荷物をほったらかして子どもを抱っこしながら、きっとあっという間にオモチャや服が散らばって、もとどおりの部屋になってしまうんだろうな、と思った。

【 その後 】
東北に行ってから、日々の生活がスローになった気がする。

「今日は何して遊ぶ?」って、旅先で思ってたことを家でも言っている。「楽しいことしよか!」って、ウキウキしている。「しないといけないこと」がないというのは、こんなにも楽だったのかと思う。自分が勝手にしないといけないと思いこんでるだけで、案外しないといけないことなんて少ないんじゃないかなと思う。
え???部屋の片づけやご飯の支度って???(黙秘・・・)

なぜなんだろう、変わることを求めて旅に出るのではないのに、旅する度に変わっている自分に気づいておもしろい。その時々必要な場所に引き寄せられるようになっているのなら・・・それこそおもしろい。

子どもたちよ、母ちゃんは、知らない世界をたくさん見たいし感じたい。
これからも、今行ける所へ行こう。
留守番ができるようになるまでは、一緒に行こう。
今回も、一緒に来てくれてありがとう。
そして、母さんも。
一緒に行けてよかった。ありがとう。
次は、どこで何を感じるんだろう。そして、その頃私は何をしているんだろう。